モブマサ。バックアップ用。
<悪辣なる小悪党>
1.被虐と躾
気が付くとベッドの上にいた。
肌に感じる涼しい空気に目を覚ましたマサキは、先ず自身の身体を確認した。服が脱がされているだけではなく、手足を黒いゴムベルトでベッドに繋がれている。混乱甚だしいまま、次いで周囲を窺う――と、ベッドの近くに置かれた一人掛け用のソファにブランディッシュ侯爵が、ワイングラスを片手に座っている。
「お気付きになられましたかな、マサキ殿」
「どういうことだ、これは」
「なあに、ちょっとした余興ですよ」
くっくと嗤ったブランディッシュ侯爵の表情は、先ほどまでの好々爺然としたものとは別人のようだ。細まった目の奥でぎらつく瞳。そして下卑た笑いを浮かべる口元。卑しさが前面に押し出された顔付きは、これこそが本性と評するに相応しい。
「私は酒の肴に他人の性行為を見るのが好きでしてな。救国の英雄がどう乱れるのかを是非ともこの目で見たいと」
「巫山戯るな!」
伊達に剣聖にまで上り詰めた訳ではない。身体能力に自信があるマサキは、ゴムベルトを引き千切ろうと手足に力を込めた。
力任せに腕を引き、勢い付けて脚を振り上げる。
ところが、である。見た目は千切り易そうに見えるゴムベルトは、伸び縮みはするものの、千切れる気配がない。
「特殊加工を施したゴムベルトになります。引き千切るのは至難の業かと」
「このっ……後で覚えておけよ……」
引っ張っても引っ張っても元の位置に手足を戻してしまうゴムベルトに、引き千切るのを諦めたマサキはベッドに大の字に寝そべった。
どういった扱いをされるのかは不明だが、目的からして終わりのない拘束ではなさそうだ。ならば、暫しの辛抱だ。この場から解放されたらその足でセニアにブランディッシュ侯爵が危険人物であることを報告しに行こう……考えを纏めた直後、マサキのそうした思惑を見抜いたのだろう。「ところでマサキ殿には義妹君《いもうとぎみ》がおられるとか」ワイングラスを揺らしながら、おもむろにブランディッシュ侯爵が口にする。
「それが……って、まさか……」マサキは焦った。
救国の英雄たるマサキ相手に嘘を吐いてまで無礼を働いているぐらいである。ゼオルートの娘たるプレシアに無礼を働くくらい訳ないことだろう。プレシア。マサキは胸の内で義妹の名前を呼んだ。無事でいてくれ。そして義妹の無事を祈った。
「こちらの映像をご覧いただきましょう」
ブランディッシュ侯爵が指を鳴らす。と、同時にベッド正面の壁面いっぱいに映し出される映像。大写しになるプレシアの姿に、マサキの顔面から血の気が引いた。
背後に並んでいる見覚えのある家具は、紛れもなくリビングのものだ。
無邪気にも鼻歌を歌いながら、リビングの掃除をしている義妹プレシア。手法は不明だが、ブランディッシュ侯爵はゼオルートの館のリビングにいるプレシアをリアルタイムで監視しているようだ。家を出る際に目にした服を纏っている義妹に絶望的な気分にりながら、マサキは自分が取るべき行動に考えを巡らせた。
プレシアの様子からして、撮られていることには気付いていないようだが、この至近距離である。いつ何が起こってもおかしくない事態には違いなく。
「義妹君の無事は保証しますよ。マサキ殿が大人しく私の云うことを聞いてくだされば……ですが」
それは、ブランディッシュ侯爵に歯向かえば、プレシアに危害を加えるという宣言だった。「くそっ……この、卑怯者……」マサキはきつく奥歯を噛み締めた。好々爺的な見た目に惑わされた己が恨めしい。ブランディッシュ侯爵の狡猾なまでの悪辣さに、とんだ化け狸だ。と、内心で悪態を吐く。
「まあまあ、マサキ殿。きちんと躾けてあげますからご安心を」
ソファの脇にある小型の丸テーブルにワイングラスを置いたブランディッシュ侯爵が両手を打つ。執事でも呼ぶつもりだろうか。待つことしか出来ないこの身が恨めしい。マサキはブランディッシュ侯爵の斜め後ろにある両開きの扉に目を遣った。
直後、扉が開く。
姿を現したのはベルト製のボンテージスーツに身を包んだ筋肉質の男性ふたり組だった。体格は非常に似ているが、片方の男性は栗色の髪に碧眼、もう片方の男性は黒髪に緑眼と顔立ちが異なっている。彼らはブランディッシュ侯爵の目配せを受けてベッドへと一直線に歩んでくると、マサキが頭を置いている枕近くに並んで立った。
まさか。マサキの全身が総毛立つ。
目の前にある彼らの股間はビキニパンツで覆われているが、立派な男性器を持っているのは布越しにも伝わってくる。無理に決まってる。マサキは頭を振った。ブランディッシュ侯爵の発言からして、彼が望んでいるのはマサキとこのふたり組の性行為であるに違いない。だが、全く男性との経験がないマサキに、どうすれば彼らの男性器を受け入れられたものか。
「お気に召していただけましたかな。マサキ殿には細身ですから、こういった男性の方が相応しいかと」
愉しくて仕方がないといった様子で、ブランディッシュ侯爵が優雅にワイングラスを傾ける。
最悪の形で自尊心を踏み躙られようとしている。その現実に、マサキの心に殺意が芽生える。とはいえ、それを実行に移すことは、義妹が何より大事なマサキには出来なかった。ただ歯を食いしばって、ブランディッシュ侯爵の卑しい顔を睨み付けるだけだ。
「右がケント、左がマシューになります。ふたりとも、マサキ殿に御挨拶を」
ブランディッシュ侯爵の紹介によると、碧眼がケント、緑眼がマシューであるようだ。
どちらもこういった場には慣れているらしく、マサキを目にしても顔色一つ変える気配がない。だが、マサキには理解《わか》ってしまった。そういった嗜好であるのだろう。真顔を取り繕ってはいるものの、好色さが窺える目付き。ふたりの値踏みするような視線に晒されたマサキは、自分が性的な対象として同性から見られる恐怖を身をもって思い知った。
怖くて仕方がない。
だが、プレシアの為にも耐えなければ。
養父ゼオルートを失ってから、マサキはプレシアと支え合って生きてきた。時には喧嘩をすることもあるが、それも兄妹として気を許し合っているからこそ。血が繋がっていなくとも、本当の妹だと思っている。プレシアに何かあろうものなら、マサキは自分を生涯許すことはないだろう。
それに、マサキの嗜好はノーマルだ。気になるのはこれまで全て女性であったし、自慰の妄想の相手も全て女性であった。そんなマサキに、どうすればブランディッシュ侯爵が望んでいるような反応が出来たものか。出来る筈がない。その考えに至ったマサキは少し気が楽になった。そう、出来ないものは出来ないのだ。そうである以上、ブランディッシュ侯爵は早々にマサキを酒の肴にすることを諦めるに違いない。
マサキの内心を様々に想像したことだろう。くっくと今再び嗤い声を上げたブランディッシュ侯爵が、それでは――と、指を鳴らした。その合図とともにベッドに乗り上がってくるケントとマシュー。彼らはマサキを挟み込むようにベッドに横になると、物も云わずにマサキの耳に口付けてきた。
「な……っ……」
思いがけず走った快感に、マサキはきつく目を閉じた。
耳朶を食まれ、耳介を吸われる。時折、耳孔に吹きかけられる息に、もそり――と、マサキの身体の中から何かが這い出てきた。
股間が熱い。
先ほど顔を合わせたばかりの男性ふたりの愛撫に、マサキの身体は翻弄された。耳の裏側に口付けられては悶え、首筋を吸われては腰が砕ける。どうかすると口を衝いて出そうになる喘ぎ声。マサキは決して声を出してなるものかと、口唇を噛んで耐え忍んだ。
「どうやらマサキ殿は感度に優れているようですな」
それでも我慢には限りがある。口の端から洩れ出始める吐息。ブランディッシュ侯爵が吐いた言葉にはっとなる。
正気を取り戻したマサキは、羞恥に頬を染めながらも、意地を捨ててなるものかと目を開いた。
天井を睨む。
だが、ふたりの愛撫に終わりはない。舌が首筋を辿ってきたかと思えば、鎖骨を吸い上げられる。そこから更に乳首に向けて、舌が滑り落ちてくる。あっ。マサキは身を竦めた。先にマサキの乳首に辿り着いたのはマシューだ。彼に右の乳首を吸われたマサキは、突如として湧き上がった未知なる快感に声を上げずにいられなかった。
「ま、待て……あ、待て……」
わななくマサキの口唇がケントによって塞がれる。
自らの舌に舌を絡み付けられたマサキは、くぐもった声を上げながらケントの口付けを受けた。ん……ふ……こなれた舌の動きに意識が囚われた。気《プラーナ》の補給を頻繁に受けるマサキは|口付け《キス》の経験だけは豊富だったが、そのマサキをして上手いと思わせる舌の動き。口腔内を余すことなく舐め上げられたマサキは、自らの視界が滲んでいることに気付いて気を引き締めにかかるも、マシューからの愛撫もあってか。どうかすると快楽に沈んでゆく身体に、マサキは口惜しさを覚えずにいられなかった。
「いいですよ、マサキ殿。そういった反応をお待ちしておりました」
慇懃無礼の本領発揮か。逐一丁寧に感想を述べてくるブランディッシュ侯爵が鬱陶しい。マサキは顔を動かしてブランディッシュ侯爵の顔を睨み付けた。だが、それも僅かな間だった。追ってくるケントの顔がマサキの顔を覆い尽くす。んんっ……マサキの口唇の端から熱い吐息が洩れ出たかと思うと、元の位置に顔を引き戻される。
彼らの巧みな愛撫に、マサキの身体はすっかり高ぶってしまっていた。
乳首の上で動を増すマシューの舌。小刻みにちろちろと触れてくる濡れた感触が、性欲に火を点ける。達《い》きたい。マサキは自身の股間に意識を這わせた。体中の熱が男性器《ペニス》に集中しているような感覚は、マサキの男性器《ペニス》が射精の準備を済ませたことを意味している。
三度、ブランディッシュ侯爵の指が鳴る。
マサキの口唇から口を離したケントが、左の乳首へと口唇を滑らせてくる。
あっ、ああっ。マサキは頭を仰け反らせた。後頭部を枕に擦り付けながら、ふたりの男からの乳首への愛撫を受ける。はっ、くっ、ああっ。口唇を閉ざそうと試みても直ぐに開いてしまうまでに、勝手に喉を衝いて出てくる喘ぎ声。自らの声が、次第に聴いたことのない響きを奏で始めていることにマサキは気付いていた。
こんな声は知らない。
ケントとマシュー、ふたりの筋肉男の舌技は、それだけマサキの身体を彼らに開かせてしまっていた。それは彼らの愛撫がソフトであることと無関係ではないのだろう。乳首を擽るような舌の動きはまるで鳥の羽で撫でられているかのようでもある。あ、ああ。マサキは身悶え続けた。吸い上げ、舐り、突きと、様々な技を披露する彼らの舌は、マサキに新たな世界の扉を開かせようとしているかのようでもある。
また指が鳴る。
顔を上げたマシューがマサキの脚側へと身体を移動させた。かと思うと、身を屈める。何を――などというマサキの言葉は野暮だ。直後に吸い上げられる亀頭。硬く張ったマサキの男性器《ペニス》がマシューの口内に収まる。
――あ、やめ。それは、やめ――……ッ……
拒否を言葉にしてみるも、それは空しく辺りに響き渡るだけだ。
マサキは腰を逸らした。視界の隅にあるマシューの頭が股間で蠢いている。その口技から逃れようと身体を左右に振ってみるも、バンド製のゴムはマサキの身体をすぐさまベッドの中央へと引き戻していった。淫猥な音を立てながらマサキの男性器《ペニス》に刺激を加えてゆくマシューの舌。そして繰り返し乳首を吸い上げてくるケントの口唇。執拗に繰り返される愛撫に、や、だ。マサキはみっともなく声を上げて身体をくねらせるばかりだ。
――あっ、やだ。やめろっ、やめろって……
声で抵抗を続けるも、その響きは心ともない。
このままでは射精に至ってしまう。当初の目論見と大きくずれた展開に、マサキは必死になって意識を逸らそうとするも、襲い来る快感は止め処ない。まるで底なし沼だ。未知なる快感を立て続けに与えられたマサキは、底のない快楽に、意識を乗っ取られそうになっていた。
ぱちん。そのマサキの意識を呼び覚ますかの如く、ブランディッシュ侯爵の指が更に鳴る。
けれどもマサキの目は覚めなかった。
尿道を舌で押され、亀頭を吸われ、陰茎を舐め上げられる。マシューの舌技は、相手が男性であることを忘れさせるほどだ。
人生で他人によって与えられる初めての快感。そういった意味ではケントからの乳首への愛撫もそうだ。何の為にあるのかわからなかった器官が、ここまでの快感を覚えるとは、これまでのマサキであれば考えられなかったことだ。
「実にいい眺めですな、マサキ殿。英雄が欲に溺れて堕ちてゆく様など、そうそう見られるものではありません。私ひとりで愉しむのは勿体ないくらいの酒の肴ですよ」
口惜しい。マサキは恥も外聞もなく泣き出したい気持ちに囚われるも、直ぐに快感に飲み込まれてゆく。
如何にセニアからの勧めがあったにせよ、関わってはならない人間というものはいるものだ。マサキを他人と交わらせて愉悦に浸るなど悪趣味の極みではないか。そういった意味で、ブランディッシュ侯爵は、関わってはならない人間の最たるものだ。
救国の英雄としてもてはやされている自分に驕っていたとはマサキは思わないが、それでもそうした扱いに一種の慣れを感じてしまっていたのは事実だ。その慢心が、マサキに他人から向けられる悪意に目を塞がせた。そう、プレシアに魔の手を伸ばす人間がいることに気付けぬほどに……。
――あっ、あ。やめろっ。そんなにされたら、イク……ッ……
マサキの身体がよんどころないところに追い込まれていることを、その言葉から察したのだろう。ずるりとマシューの口からマサキの男性器《ペニス》が吐き出される。
マサキはほっと安堵の息を吐いた。ケントの愛撫もマサキをよがらせてはくるが、身体の一番弱い部分への愛撫に比べればまだ耐えられるものだ。くっ、ふ、うっ。マサキは声を押し殺しながら、ケントからの乳首への愛撫を耐えた。
だが、マシューもただ止まってはいない。マサキの右乳首に手を伸ばしてくると、くるくると指を回しながら愛撫を仕掛けてくる。
ぱちん。また指が鳴る。
ケントの舌とマシューの指が乳首から離れた。かと思うと、四つの手がマサキの全身を撫で回してくる。腕に腹、腰に腿。ぞわりぞわりと立ち上ってくる快感を更に後押しするように、時折、吸い上げられる肌。紅斑が散るマサキの身体を、うっとりとした眼差しで眺めるブランディッシュ侯爵の姿……。
腹立たしい。腹立たしいのに、マサキの身体は力を失ってしまっている。
――プレシア。
マサキは胸の内で義妹の名前を呼んだ。心に灯る小さな炎はマサキの意地だ。男の弱さに身体が屈してしまっても、心までは渡せない。
けれどもそれは自己欺瞞であるのだ。
マサキの足先を口に含んだマシューに、ああっ。マサキはあられもない声を放った。口内で足の指を舐め回されている。その動きに同調するかのようにマサキの手の指を舐めてくるケント。その都度マサキの胸を占めるのは、限りない陶酔だ。息を呑むほどの快楽に抵抗の意思を奪われたマサキは、なけなしの自尊心に縋りながらも、彼らに身体を差し出さずにいられなく。
「私のもてなしを悦んでいただけているようで何よりですよ、マサキ殿。では、そろそろ本番と参りましょう」
マサキははたと目を開いた。ブランディッシュ侯爵の本番――と、いう言葉に身構える。
いつしかブランディッシュ侯爵の視線さえも気にならなくなってしまうほどに、マサキは快楽に溺れてしまっていたが、本来、この場は彼が酒の肴としてマサキの痴態を鑑賞する場であるのだ。それを思い出したからこその衝撃。愛撫に続く行為などひとつしかない。
「おかしな気は起こさない方が賢明ですよ、マサキ殿」
またもブランディッシュ侯爵が指を鳴らす。と、ふたりの男がマサキの手足を拘束しているゴムベルトを外しにかかった。
マサキの心に躊躇いが生まれた。逃げるなら今しかない。だが、プレシアだ。あの映像をどうやってブランディッシュ侯爵が撮っているのかを明瞭《はっき》りさせせずに、どうしてこの場を離れられたものか……自身の純潔とプレシアの命。天秤にかけるまでもない。マサキはその場に留まった。
留まって、覚悟を決めた。
マサキの身体に腕を回してきたケントが、マサキのベッドでの位置を変える。ブランディッシュ侯爵に頭を向ける形でベッドに垂直に身体を横たえられたマサキは、諦観の念に囚われながら目を伏せた。するりと膝の裏に入り込んでくるケントの手。続けてマサキの足首をマシューが取る。そのまま、ブランディッシュ侯爵に菊座《アナル》を開き見せるように身体を二つに折られたマサキは、自分が取らされている格好に羞恥を覚えずにいられなかった。
「やめ……て、くれ……」
無駄と理解《わか》っていながらも、懇願せずにいられない。排泄にしか使わない器官を、これから自分は犯されるのだ。力なく言葉を吐いたマサキに、ブランディッシュ侯爵は嗜虐心をそそられたのだろうか。あっはっはと勝ち誇ったような嗤い声を上げた。
「きちんと躾けて差し上げなさい」
主人の命令には絶対服従らしい。直後、菊座《アナル》に挿入《さし》込まれたケントの指に、うう。と、マサキはくぐもった呻き声を上げるしかなかった。
筋肉質な男だけあって、指もまた太い。恐らくは人差し指と中指であるのだろう。ぬちょりぬちょりと抽送を始めた二本の指が、孔の奥にあるしこりのようなものを押してくる。あっ。マサキは目をきつく閉じた。直接触れられている訳でもないのに、もどかしさを伴った快感が男性器《ペニス》に生じる。
――出したい。
陰嚢を押されているような感覚に腰を振りたい衝動に駆られるも、マシューに足首を押さえ込まれていては叶わない望みだ。手を離してくれ。マサキはマシューに頼み込んだ。とにかく一刻も早く達したい。だが、躾けろと主人の命を受けているだけはある。ケントもマシューも笑うばかりで拘束を解く気配がない。
――あっ、あっ、あっ……
ケントの指に慣れたのかも知れない。菊座《アナル》への刺激を受ける度に、あっあと断続的な喘ぎ声がマサキの口から洩れ出てくる。我知らず口を衝いて出る喘ぎ声に、けれどももうマサキは絶望することはなかった。男性器《ペニス》の先から滲み出た精液がマサキの顔に滴ってくる。とにかく射精を済ませたくて仕方がない――男性の本能的な性欲に支配された理性が、マサキから正常な判断力を奪ったのだ。
――あ、やめ。出る、出ちまう。やめ、あっ、ああ……っ!
しこりを掠める指の腹の動きが激しさを増す。胃の底からせり上がってくる快感が、やがてマサキの脳に到達した。あ、ああっ! ひときわ高い嬌声がマサキの口から飛び出した刹那、マサキの顔面は白濁した液体に覆われた――……。
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