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あおいほし

日々の雑文や、書きかけなどpixivに置けないものを。

堕落の夜(後)
後編です。あんまり盛り上がらなかったかも。
その内別バージョンを書くかも知れません。



<堕落の夜>

 それから暫く。荒らぐ息にマサキが胸板を上下させていると、落ち着くのを待っていたのだろう。「イイ感じねえ、ボーヤ」と、頭上からサフィーネの声が降ってきた。
「シュウ様が可愛がるのもわかるわあ。私もあんたを可愛がりたくなったもの」
 呆気なく絶頂《オーガズム》に達してしまったマサキに、何らかの作為を感じたのやも知れなかった。まだまだ臨戦態勢のサフィーネが、そう云って頭を股間に埋めてきたのにマサキは焦る。
 自身の解放が先に延びたからではない。
 先ほど射精を済ませたばかりのマサキの男性器《ペニス》は非常に敏感な状態にある。それを知らぬ女性でもあるまい。性経験が豊富なサフィーネは、マサキの男性器《ペニス》が敏感な状態にあるとわかっていながら手を出そうとしているのではないか? 男性器《ペニス》を握り込まれたマサキは、慌てて腰を引こうとするも、矢張り身体は思い通りには動かなかった。
 シーツの海に埋もれたまま、サフィーネのなすがままに。マサキは彼女の口技を受けた。
「あっ……お、前……やめろって……」
「女性からのサービスは黙って受けるもんよ」
 亀頭を吸われたマサキは背をしならせた。そして女のように喘いだ。亀頭の先から陰茎の根元まで、じっとりと絡み付いてくる舌が、サフィーネが踏んできた場数を表しているようだ。
 シュウの舌技も丁寧で繊細だが、それを上回る舌技。裏筋を舌先で舐め上げられたマサキは、あまりの気持ち良さに、足先でシーツを掻かずにいられなかった。
「ホント、いい子ねえ。ボーヤ。またこんなにしちゃって……」
 陰嚢を吸われ、陰茎を舐め上げられ、亀頭を吸われる。わざと音を立てているのだろう。リップ音が響く中、マサキは息を荒らげながら幾度も細い声を上げた。
 ――あっ、あっ、ああっ……。
 素直なマサキの反応が面白かったに違いない。程なくして張りを取り戻したマサキの男性器《ペニス》を物惜し気に撫でながら、「ご褒美は欲しくないかしら?」妖艶な笑みを浮かべてサフィーネが口にする。
 中途半端で放り出されるのは、自ら慰めるのが叶わないこの状態ではただただ辛いだけだ。躊躇はしたが、既に一度彼女の手で絶頂《オーガズム》に導かれている身である。二度ぐらいであれば、問題あるまい。脳裏に過ぎったシュウの顔に罪悪感を抱きながらも、マサキは自分の欲望に正直になることにした。
「この、状態で、放置……すんな……っ」
 マサキの返事に勝利を確信したようだ。サフィーネが今度はマサキの足枷を解きにかかる。
「逃げるなら今の内だけど、どうかしら?」
 ベッド脇に置かれている椅子に腰かけたサフィーネが、足を組んで悠然とマサキを見下ろしてくる。「ご褒美が欲しかったら、自分の足で歩いてくるのね」彼女の台詞に今また躊躇いが生じるも、裸のままでは外には出られない。マサキはゆっくりとベッドを下り、サフィーネの許へと歩んで行った。
「いい子ね、ボーヤ」
 艶やかな肌。赤く爪が塗られているサフィーネの手が、マサキの頬にかかる。さあ、いらっしゃい。手を引かれたマサキはサフィーネの腿を跨いだ。「自分で挿入《いれ》なさいな」黒々と輝く、彼女の股間で反り返るシリコン製の男性器《ペニス》。マサキは自らの手で菊座《アナル》にシリコンをあてがうと、静かに腰を落とした。
 ぬるり。亀頭の先がひだを割る。
「そうよ、そう。ゆっくりとね。きちんと全部挿入《いれ》るのよ」
 サフィーネに促されるがまま、続けて腰を落としてゆく。
 その先は呆気なかった。シュウとの性行為で男性器《ペニス》を受け入れるのに慣れた菊座《アナル》は、既に一度の性行為《セックス》を終えた後でもあるからだろう。マサキも驚くほどに柔軟に、するするとシリコンを咥え込んでいく。
「はっ、はあ……ああ……」
「お上手よ、ボーヤ。そうやってシュウ様の男性器《ペニス》も咥え込んでいるのね。いやらしい子」
 嗜虐心を煽られたのだろう。責めているように思える台詞を愉し気に吐くサフィーネに、マサキの羞恥は限りなかったが、ここまでしてしまったものを今更退けもしない。サフィーネに引かれた手を彼女の肩に置く。
「ほら、ちゃんと掴まってなさい。たっぷり突いてあげるから」
 云うなり腰をグラインドさせたサフィーネに、ああ、ああ。マサキは求めていたものを得たとばかりに喘いだ。ああ、ああ。浅く、深くと変幻自在に突き上げてくるサフィーネの腰遣いは、先ほどと変わらぬ快感をマサキに齎してくる。
 とにかく前立腺を刺激するのが上手いのだ。
 亀頭の先で擦り上げては、深いところに潜り込んでくるシリコン製の男性器《ペニス》。あっあっ。マサキはサフィーネにしがみ付いた。みっともない姿を晒しているのにも関わらず、覚える安心感。今日の出来事を彼女は決してシュウに口外しないに違いない。喘ぎよがりながら、マサキはサフィーネに感じる妙な抱擁感の理由を理解《わか》ったような気がした。
 夜毎、男を変える淫蕩な女は、それだけに男の扱い方を心得ているのだ。
「ほうら、もっとよ。もっと鳴きなさい、ボーヤ」
 前立腺を刺激され続ければ、男性器《ペニス》にも反応が出る。マサキは股間に感じるもどかしさに唸った。熱を増してゆく男性器《ペニス》が、じとりと汁を垂らし始める。
「そうそう、イイ感じよ。もっと鳴いて頂戴。ちゃあんと出来たらご褒美よ」
 きっとご褒美=射精であるのだ。股間を三ツ輪のペニスリングで締め上げられているマサキは、ご褒美の言葉に気分を高揚させた。射精を迎えたくて堪らないからこそ、ひたすらに腰を振る。あっ、ああっ、はあっん。自分のものとは思えぬ細く高い声。甘ったるい響きを含む喘ぎ声が、室内に反響している。
「云われる前に腰を振っちゃうなんて、いけない子ねえ。お仕置きが必要かしら?」
 サフィーネの言葉に、マサキは不安を抱いた。何せ嗜虐心の強い女性だ。サディズム的なお仕置きが飛んでこないとも限らない。だが、彼女がしたことはもっと別のことだった。依然、スライムが纏わり付いているマサキの乳首。指を鳴らしたサフィーネに、袋の中へとスライムが引き上げてゆく。
 マサキは微かに安堵した。
 乳首への刺激を取り上げられる程度で済むなら御の字だ。
 けれども彼女のお仕置きはそれだけでは終わらなかった。マサキの胸からふたつの吸盤が取り去られる。露わになった乳首を見たサフィーネがうっふっふと声を上げて笑った。ぷっくりと膨れ上がった乳首はまるで葡萄の粒のようだ。
「お仕置きよ、ボーヤ。自分で弄りなさい。弄らないと突いてあげない」
 仕方なしにマサキは手を乳首に這わせた。おずおずと指を動かす。いつもそうなの? 意地悪めいた口振りにマサキは口の端を噛んだ。口で答えるのは憚られる。マサキはいつもシュウがするように乳輪に沿わせて指を回した。乳首に触れるか触れないかの位置を掠めてゆく指の腹が背筋を震わせる。
「あらあ、可愛い。初心だ初心だと思ってたけど、ちゃんとわかってるんじゃないの」
 なめかましい腰の動き。再びマサキの|菊座《アナル》を突き上げてくるサフィーネに、マサキは陶酔にも似た感情に捉われた。彼女の股間にあるのは、硬質的なシリコン製の男性器《ペニス》である。それなのに、その腰の動きひとつで、まるで生命を吹き込まれたかのように生々しさを増してゆく。
 ――あっ、イク……イキそう……
 マサキはサフィーネの豊かな赤い髪に顔を埋めた。立ち上ってくる女の香りが快い。
「なら、イっちゃいなさいな!」
 マサキが立て続けに自らの手で絶頂に導かれてゆくのが愉しいのだろう。サフィーネの腰の動きが激しさを増す。あっあっ。リズミカルなその動きに合わせて洩れ出る自らの喘ぎ声が遠い。マサキは悶えた。熱に塗れながら悶えた。
 瞳の奥に閃く光の環。弾け散ったその輝きが最高潮に達した瞬間、マサキは二度目の絶頂《オーガズム》を迎えていた。

 ※ ※ ※

 射精の余韻に浸るようにしてベッドで眠りに就いたマサキが次に目を覚ましたとき、ベッド脇の椅子に腰かけていたのはシュウだった。
「酒は程々にするのですね」
 服は着せられていたものの、乱れたベッドに寝ているのである。論理で正解を導く男にかかれば、秘密もかたなしだ。どことなく不機嫌にも映る表情からして、マサキがサフィーネに弄ばれたことに気付いているのは間違いなさそうだ。
「帰りますよ、マサキ。立てますか」
 だが、シュウが何かをマサキに云ってくることはないままに。
 差し出された彼の手を取ったマサキはシュウに尋ねた。ここは何処だ? 嘘を吐くつもりはなかったが、本当に知らないのであるから仕方がない。そのマサキの台詞に安堵したのだろう。表情を和らげたシュウ曰く、ここはサフィーネが男と逢引するのに使用している建物の一室であるらしい。
 通りで準備がいい筈だ。マサキはその言葉を飲み込んだ。
 昨晩の記憶は全てここに置いていこう。
 シュウとともに部屋を出たマサキは、ようやく解放された歓びを胸に、陽射しを受けて輝く王都へと一歩を踏み出した。




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