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あおいほし

日々の雑文や、書きかけなどpixivに置けないものを。

家族の肖像(了)
これで完結です!
次回のリベンジは白河祭りが終わってからにしようと思います。
その時にはまたよろしくお願いします!
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<家族の肖像>

 館に一歩足を踏み入れるなり漂ってくる様々な料理の匂い。どうやら支度を終えているようだ。お帰りなさい! リビングから姿を現わしたプレシアが、マサキとゼオルートの許へと駆け寄って来る。
「おとうさん、こっち!」
 射的で取ったクマのぬいぐるみを渡す間もなく、腕を引かれたゼオルートがダイニングへと向かってゆく。プレシアとしては自身の今日の努力の成果を一刻も早く見せたかったのだろう。続いてマサキがダイニングに足を踏み入れれば、テーブルの上には山と料理が用意されている。
 バースディケーキにローストチキン、生魚のカルパッチョ、ハムとチーズの盛り合わせ……これは、と目を丸くするゼオルートに、「お誕生日おめでとう、おとうさん!」プレシアが満面の笑みで声を上げた。事情が良く飲み込めないといった様子でマサキを振り返ったゼオルートに、大したもんじゃねえけど。と、マサキは荷物の中からラッピングされたワインと写真立てを取り出した。
「様子がおかしいとは思ってたんですよ」プレゼントを受け取ったゼオルートが、その包みを開きながら云った。「日頃不愛想なあなたにしては随分と積極的に私を誘ってくれると」
 30年物のワインに、ニッケル製の写真立て。しげしげとマサキからのプレゼントを眺めたゼオルートは、マサキを探し回った時間のことを思い出したのだろう。通りで口を割らない筈です。苦笑しきりで言葉を継ぐと、「でも、嬉しいですよ。有難う、マサキ。写真は大事に飾らせてもらいますよ。それにプレシアも、こんなに沢山の料理を用意してくれて」
「大変だったんだよ、おとうさん。いつ帰って来るかわからないから」
「いやあ、心配をかけたというか、気を遣わせてしまったというか……」
「今日の主役はおっさん、あんただろ。気にするなって」
 プレシアに腕を引かれながらテーブルに着いたゼオルートに、マサキもまた荷物を床に置いて自身の席へと着いた。父親にサプライズパーティを仕掛けるという目的を達せたことが嬉しくて堪らないのだろう。盛大に頬を緩ませたプレシアが、ゼオルートのグラスに用意していた酒を注ぐ。
「おにいちゃんも付き合うよね?」
 続けて目の前のグラスに注がれた酒に、まあいいか。マサキは小さく頷いた。
 温かくマサキを受け入れてくれた大事な家族が、喜びに満ちた表情をしている。だったら今日ぐらいは気兼ねなく飲むことにしよう。グラスを取り上げたマサキは、かんぱーい! と、声高らかに音頭を取ったプレシアに、腕をゆっくりと前に差し出していった。

<了>


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