ちゃんとオチるのか不安になってきましたwww
下劣な内容でもやることはしっかりやる。そんな当社の白河に励ましのメッセージを。
下劣な内容でもやることはしっかりやる。そんな当社の白河に励ましのメッセージを。
<云えないようにしてみれば>
「私はね、マサキ。あなたの身体も一種の芸術品だと思っているのですよ」
「その台詞だけで先が見えた気がするけどな。まあ、いい。取り敢えず聞いてやる」
聞かニャきゃいいのに。と足元から使い魔たちの声が――ついでにポケットの中から溜息の音が聴こえてきた気がしたが、ここで素直に引き下がれるような性格であったら、とうにこの男の縁は切れている。マサキは首周りを撫で回し始めたシュウの手に身を委ねながら、続く彼の言葉を待った。
「この滑らかで細い首周り」
そう言葉を吐いたシュウがマサキの後れ毛を掻き上げた。続けてうなじに口付けられて、身を竦める。
「見た目よりも薄い胸板」
そこから耳の付け根に口唇を動かしたシュウが、ジャケットの上からマサキの胸周りを撫でてくる。
「そして、この抱えやすい細腰」
柔らかく腰を抱き留めてくるシュウに、マサキは顔を伏せた。耳の奥に入り込んでくる彼のバリトンボイスが、嫌になるくらい心地いい。そのまま舌を耳孔に挿し入れてきたシュウに、ん……マサキは小さく声を上げた。
真昼間から良くやりますよ。ポケットから顔を出したようだ。やけに明瞭りと響いてきたチカの声に、マサキは一瞬、我に返りかけるも、そこは自らの使い魔の習性を熟知している主人だけはある。マサキの耳を舐りつつも即座にチカを掴み出したシュウが、有無を云わせずに床にその身体を叩き付ける。
きゅう。と、間の抜けた声を出して床に伸びたチカを、無言でシロとクロがリビングから運び出してゆく。どうやら自分たちがいていい雰囲気ではないと察したようだ。そのまま戻って来る気配のない二匹の使い魔に、チカもあのぐらい聡ければいいのですがね――シュウがマサキの耳元でクックと嗤った。
「それで、その俺の身体が何だって」
「引き絞られたあなたの身体は、とても均整の取れたプロポーションだと云っているのですよ、マサキ。それ即ち黄金比。あなたの身体はあなたが思っている以上に芸術品です」
「良くわかんねえが、お前が俺の身体に気味の悪い評価をしていることだけはわかった」
「人聞きの悪い」シュウの手がマサキのジャケットにかかる。「かの有名なウィトルウィウス的人体図を知らない筈もないでしょうに」
「そんなモンスターみたいな名前の人体図なんて知らねえよ」
「見ればわかりますよ、これか――とね」
云いながらマサキのジャケットを脱がせにかかったシュウに、ちょっと待てよ。マサキはその手を押さえ込みにかかった。事態が何ひとつ進展していないのに、(ピー)に及ぼうとしているシュウの鉄皮面。この男は非常識をもものともしない。
「お前、この状態で(ピー)するつもりなのかよ」
「ああ、そうでした。先ずは術を解かねばなりませんね。あなたの口から聞きたい言葉も沢山ありますし」
「……このままでいいような気がするな」
「御冗談を」シュウがマサキの耳元に息を吹きかけてくる。
擽ったさに身を竦めた刹那、パンと乾いた音が辺りに響き渡った。妙に冴え冴えとした脳内に、マサキは試しに性行為《セックス》と単語を思い浮かべてみる。先程まで聞こえていた放送禁止音が聞こえてこない。
嘘だろ。マサキは背後の欲深い男を振り返った。
「ベッドに行きますか。それとも」
チカの口を封じるよりも、マサキの口から淫語を発させたいという欲が勝ったらしかった。涼やかな表情でしらと云ってのけたシュウに、マサキは腹立たしいやら、呆れるやら……。
腕や脚から一気に抜け落ちた力に虚しさを感じながら、ちょっと待てよ。マサキは最後の力を振り絞って、放っておけば自分をベッドに運んで行きかねないシュウに尋ねた。
「俺の身体をお前が芸術品だって思ってることはわかった。けどな、それとクローゼットの中のSMグッズがどう関係してくるのかって、その説明をだな――」
その瞬間の、シュウの勝ち誇ったような笑顔! ここまで明瞭りと胸の内を明かすような表情など、自らの感情を隠したがる彼のこと。そう簡単には見れはしまい。
「おい、シュウ――」
もしかしたら、自分は訊いてはならないことを訊いてしまったのかも知れない。マサキは嫌な予感に胸騒ぎを覚えつつ、今まさに自分を抱えようとしているシュウの腕を振り払おうとした。けれども、上手く力が入らない。おかしい。気付いた時には遅かった。
「お、前……俺に術をかけて動きを封じるのは止めろって云っただろ!」
「一度だけでいいのですよ、マサキ」
マサキを見下ろすシュウの眼からは愛おしさが溢れ出ている。
マサキは額に手を当てて呻いた。これから悪逆非道な行為に及ぼうとしている人間が注いでいい眼差しではない。
「安心してください。痛い思いはさせませんよ。ただ、ほんの少しばかり身に付けて欲しいものがあるだけです」
慈しみさえも感じさせる表情で自分を運び始めるシュウに、それのどこが安心出来るんだよ――マサキは反抗するも、身体が思うように動かない現状では、最早どうにもならず。ただ大人しく寝室に運び込まれるだけとなったマサキは、絶望的な気分で目を伏せるしかなかった。
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