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あおいほし

日々の雑文や、書きかけなどpixivに置けないものを。

夢の頂(2-後)
今週分はこれで終わりです。
続きはまた来週!週末はLotta Loveの続きをやります!こっちもエロだー!!!笑

リクエストはまだまだ募集中です。もしありましたらどしどしお寄せください。

では本文へどうぞ!
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<夢の頂>

「ほら、腰を突き出して。私にあなたを感じさせるのですよ、マサキ」
 腰を支えていた彼の手が、マサキの腕へと滑ってくる。後ろ手に手首を引かれたマサキは背をしならせた。差し入れられては口を広げる蕾の奥で、彼の男性器が荒れ狂っている。ああっ、もっと。もっと奥。マサキは腰を突き出した。
 姿見に映っている自身の反り返った男性器が、延々と汁を垂らしている。
 そこ、そこ。ああ、ああ、いい。彼の男性器に貫かれる度に洩れ出る言葉。何を自分が口走っているのかさえもわからなくなりながら、それでも快感を手放せない。マサキはよがった。姿見に映った自身の乱れ喘ぐ姿を正面にしながらよがり続けた。
 じわじわと押し迫る快感が、やがて炎が燃え上がるようにぱっと開いてマサキの男性器を包み込んだ。あっ、あ、あーっ……悲鳴にも似た声が喉から迸る。不規則に跳ねる腰。ずるりと抜き取られた彼の男性器に、支えを失ったマサキは床の上に崩れ落ちた。
 ――アッ、アア、アア……
 何がどうなったのかわからなくなるほどの快感。マサキは小刻みに震える身体を丸めて、快感の余韻が収まるのを待った。そのマサキの腕を彼が取る。彼は引き上げたマサキの身体をデスクの上に伏せさせると、未だ猛ったままの男性器を無言で捻じ込んできた。
「アッ、少し、待てって……今、達《い》ったばっか……」
「散々、人を煽っておいて云えた台詞ではないですね。夜通し可愛がって欲しいのでしょう? ほら、もう少し足を開いて。そのままでは奥まで挿入《はい》れませんよ」
 ぐ、と菊座にかかる圧。尿道にプラグを嵌め込まれたままの男性器を快感が突き抜ける。それは脳天を割らんとする勢いでマサキの全身を駆け巡った。
 あっ、ああっ。マサキは更なる快感を求めて脚を開いた。
 あなたという人は――と、彼の言葉が降ってくる。彼はマサキの肩をデスクに押さえ付けて深々とマサキを貫くと、ままらぬ快感に息も絶え絶えとなったマサキの耳元で言葉を継いだ。
「本当にここを犯されるのが好きなのですね。しかもただ犯されるだけではなく、プラグを男性器に嵌められて犯されるのが好きときたものです。あの人があなたのこういった嗜好を知ったらどう感じられることか」
「い、いから、動けよ……お前、だって、使っ、てるだろ……」
「手放せと云っているのに、いつまで経っても処分しない人に云われたくはないですね。使用人たちも扱いに困っているようでしたよ。掃除の度に嫌でも目に入ってしまうとね」
「煩、い。動け、って……」
「お望み通り、動いてあげますよ。ほら」
 ああっ。顎を仰け反らせたマサキの視界の隅に、デスクの上に置かれたままの仕上げたばかりのレポートが映り込む。僅かに取り戻される理性。あ、待て。そう口にした瞬間、いつの間に解いたのか。彼のネクタイで視界が塞がれる。
 次いで、どこから取り出してきたものか。背中側に引っ張られた手首に手枷が嵌められる。そうして、上半身をデスクに押し付けられたマサキは、息を吐く間もないほどに激しく彼の男性器で突かれた。
 蕾を割って深く収められた男性器が盛んに抽迭を繰り返す。絶え間なく襲い掛かる快感の波に。ふっと弱まったかと思えば、強烈に腹の底を叩いてくる。ああ、ああ、ああ。熱を帯びた口唇を開いて、マサキはひたすらに喘いだ。ここが好きなのでしょう。彼の男性器の先端が、腸壁越しにマサキの男性器の裏側を抉ってくる。そこ、そこをもっと。形振り構わず声を上げて懇願しては、与えられる刺激に腰を振った。
 ――アッ、イク。また、イク……
 彼と重ねた性行為の回数の分、マサキの菊座は男性器を受け入れることに慣れていった。のみならず、感度も増した。今となっては、単純な自慰での射精など絶頂の数にも入らないぐらいに、マサキは彼との肛門性交《アナルセックス》でなければ強い快感《アクメ》を感じられなくなってしまっている。
「もう少し我慢をなさい。そう簡単にあなたにばかり達《い》かれても面白くない」
 それは尿道プラグの助けもあったのやも知れない。さしたる時間も経たぬ内に、再び絶頂の訪れを訴え始めたマサキに、彼はいつもの平坦なトーンとは明らかに異なる調子で言葉を継いだ。そうして、マサキが絶頂に至るのを先延ばしにするかのように、緩く突いては、激しく突き上げるを繰り返してくる。
 その彼の腰の動きは、絶望したくなるぐらいにマサキの感度を制御《コントロール》した。満ちては引く波のように、快感が押し寄せては過ぎ去ってゆく。あとほんの少しが届かない。ああ、ああ。嫌、嫌だ。イカせろ。マサキは何度も何度も彼に懇願した。それを頑健なる意思で跳ね除ける彼に、いつしかすすり泣くような声ばかりが口を衝いて出るようになっていた。
 ――ひっ、く……う、う……
 塞がれた視界の向こう側で彼が笑っている。そろそろ達《い》かせてあげますよ。手荒に返された身体に伸びてくる彼の手。リズミカルに抽迭を繰り返す男性器の動きに合わせて乳首が嬲られる。理性の全てが失われ、彼によって与えられる快楽だけに満たされる。全身をわななかせたマサキは、程なくして溜まりに溜まった精液を放った。
 ずるり、と彼の男性器が抜き取られた菊座の奥より、今しがた注ぎ込まれたばかりの精液が溢れ出てくる。
 マサキはデスクの上に身を投げ出したまま、陸に上がった魚のように忙しなく息を吐き続けた。立て続けに迎えさせられて二度の絶頂。直ぐに動き回れるほどマサキの身体は頑丈《タフ》には出来ていない。ましてや視界を奪われ、手首を戒められているのだ。自らの意思で身体を動かすのには無理がある。
 だのに彼はマサキの身体をデスクから引き摺り降ろすと、絨毯の上にへたり込んだ形になったマサキの口元に、自身の男性器を押し当ててくるのだ。
「口を開けなさい」
 穏やかながらも有無を云わせぬ迫力に、マサキは口を開いた。自身の言葉に従順であるマサキの自由を奪われた姿に、そこでようやくひとときの満足を得たのだろう。彼はマサキの口に男性器を含ませると、いい子ですね。と、髪を撫でながら、優しく声をかけてきた。

 ※ ※ ※

 また新しい絨毯を手配しなければ。マサキを戒めていた手枷を外した彼は、目隠しに使っていたネクタイをシャツの胸ポケットに収めると、細く開いているシャツのボタンを留め直した。そして絨毯の上でだらしなく脚を開いているマサキの蕾から溢れ出る自身の精液の後始末を済ませると、ソファの背もたれに掛けてあるベストとジャケットを取り上げた。
「こういったことはこれきりにしましょう」
 それらを身に付けて、彼はマサキの前に屈んだ。そして未だ動けずにいるマサキを抱えてると、ソファへと運んでゆく。
 憎らしいぐらいに取り澄ました表情。残酷な終わりを告げた直後とは思えない。ソファに下ろされたマサキは彼の背中に手を回しながら、何でだよ。と、言葉を吐いた。
「勝手なことを云うんじゃねえよ。人を犯してこうった関係に持ち込んだのは何処の誰だよ」
「だからですよ。この関係は歪んでいる」彼は深く溜息を洩らした。「あなたがこういった嗜好に目覚めるとは思っていなかった。それは私の責任です。だからもう止めましょう、|マ《・》|サ《・》|キ《・》|様《・》」
「責任、取れよ」
「無茶を云わないでください。私は執事であるとはいえ、卑しい使用人であるのに違いはありません。あなたと同じ立場にや境遇を得られない以上、どうやっても責任など取れないのですよ」
「巫山戯るな!」マサキは声を上げた。「責任を取れないのに俺を犯したのか!」
「そうですよ。私はあなたが欲しかった。何も知らずに私を頼りとするあなたが可愛くて仕方がなかった。可愛さが愛しさに変わったからこそ、欲しくて欲しくて堪らなくなった。だから待った。あなたが成人するのを待った。けれども望んでいたのはこんな関係ではなかったのですよ、マサキ様。私はただ優しく穏やかに、あなたを抱き締めてあげたかっただけだったのに」
「だったらそうしろよ!」マサキは彼を引き寄せた。
 いつでも奪うように、そして服従させるように、マサキを抱いてくる彼。倒錯した性行為、溺れた果てにあるものがマサキは怖かった。引き返せないまで快楽に囚われてしまっている自分。彼に与えられる全てが恋しい。特に激しく抱かれた先にある優しさは、まるで花の蜜に群がる蝶のようにマサキを彼との性行為にしがみ付かせた。
 それもこれも彼の気持ちを読み違えていたからだった。
 彼はマサキを嫌ってはいなかったのだ。
 それを知って、どうしてこのまま全てをなかったことには出来るだろう。マサキは彼の次のアクションを待った。きっと複雑な感情を抱いている彼のことだ。ただマサキを優しく抱き締める。たったそれだけのことを行動に移すことすら躊躇うに違いない。
 けれども彼は珍しくも素直に膝を落とすと、マサキの身体を抱き締めてきた。柔らかく髪を撫でる手。涙が零れ落ちてしまいそうになるほどに優しさに満ちている。
 ――あなたの母親を殺したのは私ですよ。
 次の瞬間、耳に降ってきた言葉にマサキは耳を疑った。身体が強張る。そのマサキの変化に気付いたようだ。彼はするりとマサキの腕から抜け出すと、そろそろ白み始めた空を確認するように、窓を閉ざしているカーテンを薄く開いた。
「信号のない横断歩道。私は近付く車が止まってくれるものと思って渡りました。けれどもその車はスピードを緩めることなく突っ込んできました。はねられた瞬間のことは良く覚えていません。警察の話を伺うに、車を運転していたあなたの母親は、私にぶつかる直前にブレーキを踏んでハンドルを切ったようです。けれども遅きに失した。あなたの母親が乗った車はそのまま電柱に激突。救急隊が到着した時点で既に事切れていたそうです」
 マサキは言葉が続かなかった。
 車を運転して買い物に出掛けるのが好きな母親だった。車の運転ぐらい運転手に任せろと云う父親に対して、出来ることはなるべく自分でしたいのよ。と笑っていた母親。どれだけ父親が使用人を任せろと云っても、料理や洗濯を自らの手ですることを欠かさなかった。
 その母親が起こしてしまった事故。マサキは喉に溜まった唾を飲み込んだ。とうに過去の出来事となった事故の原因を、父親が語りたがらなかったのはこうした事情があったからだったのだ。
「私の油断が招いてしまった事故でした。あの時、横断歩道を渡るのを少しだけ待っていれば、あなたの母親が死ぬことはなかった」
「……だからうちに来たのか?」
 そうですよ。悲し気に彼は微笑《わら》った。そうしてこう続けた。罪を償いたかった。
 マサキの父親は、「妻の過失なのだから、君は元の生活に戻りなさい」と、彼に説得を続けたようだったが、彼の決意はその程度の言葉で翻るようなものではなかった。何でもやります。そう云って引かなかった彼に、なら――とマサキの父親は提案したそうだ。君のこれからの人生にかかる費用は私が出そう。その代わり、私の息子の面倒をみてやってくれ。
「だから――もう、これきりにしましょう」
 彼がマサキに感じていたままならなさの正体を、ようやくマサキは見た。
 奪ってしまった命を償わなければならない。けれどもそれは自分の人生を懸けて行わなければならないものだ。命に釣り合うものは金銭や物品では決してない。命だけだ。それを彼は思い知ってしまったからこそ、マサキたちへの償いの為に未来を諦めた。そしてだからこそ、マサキに自らのやりきれない思いをぶつけるに至った。
「あなたの母親の未来だけでなく、あなたの未来までも奪ってしまう訳にはいきません。どうかお願いです、マサキ様。私との関係は忘れて、どうか他人と普通の人生を送って」
「だったら俺が責任を取る」
 マサキは彼の背中に近付いた。そしてゆっくりと彼の腰に手を回した。
 知らないということは罪だ。マサキは何も知らなかったばかりに彼に人生を消費させてしまった。その償いは一朝一夕に果たせるものではない。待っててくれ。マサキは云った。俺は必ず親父のようになってみせる。
「そうすればお前を自由にしてやれる。お前が学びたかったことに時間を割かせてやれる。だから終わりにするなんて云うな」
「その気持ちだけで充分です。私は今の生活を気に入っているのですから」
 マサキの手に彼の手が重なる。
 神様。彼が小さく呟くのが聞こえた。それは赦しを求めているような声でもあったし、感謝を捧げているような声でもあった。祈りを捧げているような声でもあったし、聖なる句を口にしているような声でもあった。
 東の空より朝日が昇ってくる。
 あなたが欲しい。新しい一日の始まりに明瞭りとそう口にした彼に、マサキは精一杯の気持ちを込めて頷くことしか出来なかった。


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