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あおいほし

日々の雑文や、書きかけなどpixivに置けないものを。

Paraphilia.(或いはPerverted love.)(1)
@kyoさんが自らエロのリハビリに励む作品です。

※女装受け注意。

私はギャグのつもりで書いておりますので、お読みになられる際はそのおつもりでどうぞ。

個人的に昔から白河の誕生日は2月だと思っているので、そのつもりで書いています。
その辺、ご了承の上でお読みくださいませ。
しかし四十路を迎えてからというもの、どんどんストライクゾーンが広くなるんですよね。昔は駄目だったものが大丈夫になっていく。これ、五十路に入ったらどうなっちゃうんでしょうね。
<Paraphilia.(或いはPerverted love.)(1)>

 寒さがいや増す季節になると、その人物の誕生日がやってくる。
 シュウ=シラカワ。
 最初の内は慎ましかった誕生日の”お願い“が、年々エスカレートしているのを感じつつあったマサキは、今年は何を頼まれるのかと警戒しながらも、まさか年に一度しかないこの日に何もしない訳にも行かないと、彼の誕生日の当日の朝。今年は何をすべきかを、起き抜けのベッドの中で、珍しくも朝に弱い様子で呻いている彼に尋ねるべく声をかけた。
「飲み過ぎだろ」
「誕生日の前祝いですよ……私だって景気付けに飲み過ぎることぐらいある……」
 既に着替えを終えているマサキは、暗く部屋を覆っているカーテンを開いた。
 付き合いで重ねた酒の所為もあって、いつもより目覚めの遅い朝。既に昇りきった太陽は、今日も今日とて中天で燦燦と輝いている。眩い光に目を細めながら、細く窓を開く。ラングランの豊潤な大地を心地良く吹き抜ける風が、お裾分けとばかりにその恵みを寝室に運び込んできた。
「景気を付けるのは当日にしときゃいいのに」
「あなたはいつあちらに戻ってしまうかわからないでしょう」
「だからってな……」
 昨夜、酔いに任せるようにベッドに倒れ込んだシュウは、日付変更線を越えることすらないままに、深い眠りへと落ちて行ってしまった。そのまま、何事もなく過ぎた夜が面白くなかった訳ではなかったけれども、せめて誕生日を祝う言葉ぐらいはその瞬間に云わせて欲しかったと思ってしまうマサキは、今日という日がどのように過ぎていくかへの不安も相俟って、いつも通りの調子とはいかなかった。
「それで、今年の誕生日は……何をすればいいんだ」おずおずと問い掛ける。
 ベッドの上にのそりと身体を起こしたシュウは、瞳を深く覆っている前髪を掻き上げた。胸に残る傷跡を惜しげもなく晒しながら、ちらとマサキを窺いかけて、強く差し込む光に顔を顰める。
 ややあって、その明るい世界に慣れたのだろう。シュウはベッドを出ると、服を着替えにかかった。
「あなたも懲りない人ですね、マサキ。碌なことにならないのを知っていながら、毎年この日に私の願いを叶えようとする。普通にプレゼントを渡してくれるだけでも、私は結構だと思っているにも関わらず」
「だったらそれを毎年のお願いにしろよ」
「折角、あなたが私の云うことを聞いてくださる日ですよ。ただプレゼントを強請《ねだ》って終わりなど、誰がそんな勿体ないことをわざわざするものですか」
 服を着替え終わったシュウは、そう云うとクローゼットの奥から、ビニールコーティングされた紙製の手提げ袋を取り出してきた。
 白地に黒いロゴマーク。いかにもシュウが好きそうなデザインの手提げ袋を受け取ったマサキは、シュウにその中身を検めるように云われるがまま。手提げ袋の中に入っている紙袋の内の、先ずは上に載っている小さい方の紙袋の口を開いて――。
 絶句した。
 女性用の下着。それもただの下着ではない。
 オープンバストのブラにオープンクロッチのショーツ。薄い白色のレース素材で出来た淫猥な下着をどこでシュウが買い求めてきたのか、マサキは想像だにしたくなかったけれども、どちらかと云えば彼の淫蕩な仲間こそが好みそうな意匠《デザイン》。まさか……と、思いながらも、自らの碌でもない予想が当たっているかは、いかに無粋なマサキであっても、恐ろしくて確認できそうにない。
「……冗談じゃない」
 下の大きな紙袋の中身を検める前にマサキがそう云えば、「ちゃんと下の袋の中身も確認して欲しいものですね」シュウは眉ひとつ動かさずに云ってのけた。マサキの言葉を否定しないということは、この下着の用途はマサキの予想通りのものであるのだろう。
 盛大に眉を顰めながら、マサキは下の大きな紙袋を開いた。
 中身を取り出す。
 ロリータファッションとはこういった衣装のことを指すのに違いない。黒と白の膝丈ぐらいのワンピース。大きく膨らんだスカートと袖に、ふんだんにレースがあしらわれた裾と袖口。胸元には細くも赤いリボンがちょこんと飾られている。
 おまけに白い二ーハイソックスにガーターベルトまでついてくるとあれば、全身全霊をかけて拒否しなければならない願い事であるのは間違いなく。
「死んでも着ない」
「今日ぐらいは私のお願いを聞いてくださるのでしょう」
「絶対に嫌だ」
「これでも去年と比べれば、まだ可愛げのあるお願いをしていると思っているのですよ、マサキ」
 その言葉が引き金となって、マサキの脳内に、去年のシュウの誕生日という忌まわしい記憶が蘇る。
 ――あれは過去類を見ない最悪のバースデーだった。
 思い出すのも眩暈がする去年のコスプレ衣装は、裸にフェイクファーの猫耳と鈴のフリルの鈴付き首輪を付けるというものだった。とはいえ、それだけで済んでいれば、悪趣味の一言で済んでいたのだ。問題はそのコスプレに猫耳とお揃いの尻尾がセットになっていたこと。
 どう装着するものであるのか、口が裂けてもマサキは云いたくない。
 無論、その後に何が起こったかも。
 無茶なコスプレをさせられては、足腰が立たなくなるまで犯されるバースデー。場所や体位を変えては、シュウの気が済むまで何度も何度も……今年も例に洩れず、シュウは誕生日祝いをマサキ自身にするつもりらしかった。
「ねえ、マサキ。着てくださるだけで結構ですよ。それ以上の無茶は強いません」
「お前、その台詞、毎年云ってないか」
 そんなシュウの無謀なお願いを、何だかんだで毎年聞いてしまうマサキにも問題があるのはわかっている。出来ないのなら出来ないと、はっきりと断りきればいいものを。けれども、いざシュウを目の前にしてしまうと、マサキの決心は揺らぐ。
 惚れた者の弱みだ。
 しかし……マサキは今年のお願いの品を改めて眺めた。百歩譲ってワンピースはいい。ニーハイソックスもまあいいだろう。去年の裸に猫耳に比べれば、格段に可愛げがある。
 問題は下着類だ。オープンバストにオープンクロッチ。一番まともな下着がガーターベルトとはどういうことなのか。大事な部分を全く隠させる気のない下着のセレクトに、マサキは目をきつく閉じて頭を振った。
「無理だって……」
「無茶は強いないと云っているでしょうに」
「その結果が毎年ベッドで過ごす誕生日なんだぞ、シュウ」マサキは面を上げると、シュウを睨んだ。「お前、いい加減節制するってことを覚えろよ。この日となれば先ず俺に挑発させるような恰好をさせやがって。大体、誕生日だけじゃないだろ、お前。毎回、毎回、俺の立場も体力も無視して、自分の好き勝手に犯《や》りやがる。次の日の魔装機の操縦がどれだけ大変かなんて、お前にはわかりゃしないだろうよ。ちょっとの振動が腰に響いて仕方がねえ。そりゃあな、俺だってそういう気分になるときもあるよ。だから、やらないとは云わないけどな、もう少しでいいから俺を労われよ!」
 一気呵成に捲し立て、マサキは肩で息を吐いた。云いたいことは云った。後はこれをシュウがどう受け止めるかだ……マサキはシュウの様子を窺った。
 代り映えのしない表情。まるで実験動物を眺めるような眼差しでシュウはマサキを凝視《みつ》めている。嫌な予感しかしないものの、荒ぶる息はそれ以上の言葉をマサキに吐かせてはくれない。
 そんなマサキに対して、シュウはその気持ちが落ち着いたと見るや否や、これ以上となく穏やかな笑みを浮かべてみせると、
「それで、マサキ。着るの? 着ないの?」
 まごうことなくマサキの言葉を全く聞く気いていない台詞を吐いた。


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