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あおいほし

日々の雑文や、書きかけなどpixivに置けないものを。

遠い或る日のクリスマス(前)
メリークリストフ!(三回目)
 
すみません!(土下座)延長戦確定です。言い訳は醜いのですが言い訳させてください。あのですね、私、今年働き始めたではないですか。で、クリスマス用にホールケーキを買って帰ったんですよ。そうしたら父が舞い上がってしまって……もう何年も娘がこうする姿を見てこなかったからなんでしょうね。で、まあ、真面目に父娘ふたりのクリスマスなんてやったりしちゃってたら時間が足りなく。
 
本当に申し訳ございません。ということで「マサキがタイムスリップして10歳未満のクリストフとクリスマスを祝う話」の前編です。三回ほどで終わる予定です。続きはもう少しお待ちください。
<遠い或る日のクリスマス>
 
 見覚えはあるけれども、どこか違和感を感じさせる街並み。ラングランの城下町の片隅に姿を現したマサキは、本当に自分が望んでいた時代に来れたのかと思いながら辺りを見渡した。一見、マサキが馴染んだ城下町。しかし、よくよく注意して見てみれば、結構な数の建物がマサキの知るものとは違っている。
 それらは恐らく、後の戦火で失われる建物であるのだろう。
 少なくともそれ以前のラングラン城下町にいるのは間違いない。そう考えてみれば、どこか古めかしい人々の格好も納得がゆくというものだ。マサキはウエンディに持たされたまま、ジャケットのポケットの中に仕舞いこんでいた昔のラングラン城下町の地図を取り出した。
「へえ。王都が壊滅する前に城下町に行くことがあんまりなかったら気付かなかったけど、この頃は今より道が入り組んでいたんだな。知らない道が結構ありやがる」
 シュウの元でクリスマスイブから一週間を過ごしたマサキは、彼から聞いたその子供時代の記憶を正しいものとするべく、年明け恒例の魔装機操者同士のニューイヤーパーティーが終わると、早速行動を開始した。
 科学技術による人類の発展に行き詰まりを感じたラ・ギアスが、次なる隆盛を求めて手を付けた練金学。先ずはその技術力の確認とウエンディの元を訪れたマサキが事情を説明した上で、過去に行ける方法がないか訊ねたところ、「出来ない技術ではないけれど、倫理的な観点から禁止されているのよ」との返事。
「それにしても、クリスマスパーティに不参加だった理由がそれだったなんて。妬けてしまうわね、マサキ」
 ちょっとした嫌味を口にしてみせながらも、「そういう事情だったら、精霊を頼ってみるのもいいんじゃないかしら。あなたが過去に行くのが定められた運命だったとしたら、きっと力を貸してくれるでしょう」と勧めてくれたウエンディとともに神殿に向かい、神官イブンに精霊界への門《ゲート》を開いてくれるように頼み込んだのがつい一時間ほど前のこと。過去のシュウに会いに行くという究極の私的利用に、マサキはあれこれ云われるのを覚悟していたものの、どうやらイブンの周りでは既に某《なにがし》かの兆候が見られていたらしい。「ここ数日精霊たちが騒がしかったのはその所為かも知れん」そう云って、イブンはあっさりと精霊界へマサキを送り込んでくれた。
 何度目の精霊界。幻想的な風景が広がるその世界にマサキが辿り着くと、風の精霊サイフィスは直ぐに姿を現してくれたが、大した会話はなかった。みなまで云わずとも用件はわかるとばかりに、即座に彼女はサイバスターの操縦席からこの場所へとマサキだけを転送してしまったからだ。
「ここは地図のどこら辺になるんだ……?」
 方向音痴のマサキに現在位置が地図のどこに当たるのかなどわかる筈がない。とはいえ、ウエンディが気を遣って持たせてくれた地図。何もせずに無駄にしてしまうのも心苦しい。それにこの地図にはこの時代のシュウが住んでいた屋敷の場所に印が付けられているのだ。マサキは暫く、地図と格闘を続けた。
 格闘を続けて、諦めた。
 何年前のラングラン城下町にいるのかもわからなければ、現在位置がどこかもわからないなど、巫山戯ているにも限度があるが、それもこれも自分を守護する精霊のしたこと。彼女からすれば、これも魔装機神の操者への試練なのやも知れない。マサキはそう前向きに思い直して、歩き始めた。
 どこかはわからないけれども見覚えのある通りには人が溢れている。看板の多い通りは、どうやら店が建ち並ぶ通りのようだ。マサキは現在位置を記憶の中の城下町と照らし合わせてみる。恐らく、真っ直ぐ歩くと大通りに出る筈だ。
「先ずは大きい通りに出てみるか。それでもう一度、地図を見てみて……」
 人いきれを縫うようにしてマサキが歩き始めて少しすると、十メートルほど先を往くドレス姿の婦人が突然地面にへたりこんだ。何やら物を奪い合うような素振りをしている。何だ? マサキは近付くも、「誰か、助けて……っ! 私のバッグが!」どうやら後ろから追い越しざまに誰かがそのバッグを奪ったらしかった。
 マサキが周囲を見渡してバッグを盗った犯人を探すと、二十メートルほど先にそれらしき男の後ろ姿がある。小脇に抱えたバッグ。「待ってろ!」マサキはそう婦人に声を掛けると、男の後を追って走り出した。
 速い。かなりの瞬足だ。
 マサキもスピードを上げて走るも、少しずつしか距離が縮まらない。あっという間に男は大通りに出ると右に折れた。マサキも右に折れる。男との距離は十メートルほどになっていたものの、人通りの多さは先ほどの通りの比ではない。うかうかしていると、人混みに紛れて逃げられてしまうだろう。
「待て! 盗んだバッグを返せ!」
 マサキが叫んだその瞬間だった。男の左側から、風のようなスピードで小さな影が飛び込んできた。体当たりか、当身か。突然の衝撃に耐え切れなかった男の身体がマサキの方へと吹き飛ばされてくる。「堪忍しやがれ!」地面に仰向けに転がった男に即座にマサキは飛びかかって、もがく男からバッグを奪い返した。
「盗人ですか?」
「ああ。あっちの通りで女性からバッグを奪ったんだ。ドレスを着ていたのが目に付いたんだろう。誰だか知らないが助かった、礼を云う。申し訳ないが、俺がこいつを押さえているから、警備担当の兵士を呼んできてくれないか」
 バッグ片手に暴れる男の身体を組み敷いて、マサキは目の前に人物に向けて顔を上げた。「それには及びませんよ。ジェフリー、ロイド」幼い顔立ちとは裏腹な身長。ほっそりとはしているものの、150センチはありそうだ。
 ひと目でそれとわかる上品な服装をしている。貴族の息子だろうか? それにしては身のこなしが素早かった。あれは訓練を受けていないとできない動きだ。マサキは注意深く目の前の人物を観察する。すらりと伸びた手足に、高い位置にある腰。まだ幼いだろうに、恵まれた体躯をしている……その少年の背後から、その呼び掛けに応えるようにふたりの兵士が姿を現した。
「いかがいたしましょうか、クリストフ様」
「詰所に突き出すのが手っ取り早い。そうしてくれ」
 ふたりの兵士は恭しくマサキに一礼をすると、マサキが押さえ込んでいる男の両腕を取った。マサキは抵抗する気力を失った男から身体を離し、男をふたりの兵士に預けると、立ち上がって目の前の自分より頭ひとつ低い少年の顔をまじまじと見詰めた。
「シュウ……?」
 まさか、と思いながらマサキがその名を口にした瞬間、切れ長の目を持つ少年は盛大に眉を顰めてみせた。
 
 
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