メリークリストフ!
ということで24日となりましたので、早速投下させていただきます。今回公開するお題は「サイバスターのコックピットで濃密な時間を過ごすシュウマサ」です。前置きが長くなり過ぎて本題が短くなってしまったという噂はありますが、会話だって濃密な時間の一部ですよね!(←言い訳)
次の投下時間は本日の12:00の予定となっております。今回余計な仕掛けをぶっ込んだ所為で(お題だけを素直に書けばいいものを……)結構難産となってしまったので、タバコのみならず酒の力も借りました!(キリッ それでは本文にお進みくださいませ!(*´∀`*)
ということで24日となりましたので、早速投下させていただきます。今回公開するお題は「サイバスターのコックピットで濃密な時間を過ごすシュウマサ」です。前置きが長くなり過ぎて本題が短くなってしまったという噂はありますが、会話だって濃密な時間の一部ですよね!(←言い訳)
次の投下時間は本日の12:00の予定となっております。今回余計な仕掛けをぶっ込んだ所為で(お題だけを素直に書けばいいものを……)結構難産となってしまったので、タバコのみならず酒の力も借りました!(キリッ それでは本文にお進みくださいませ!(*´∀`*)
<Scandalous Christmas>
ゼオルートの館で魔装機操者たちの親睦会を兼ねて行われるクリスマスパーティ当日の昼に任務を終えたマサキは、遅れてパーティに参加する詫びと近くの街にパーティ用の料理を購入する為に立ち寄った。
運命の女神は気紛れにマサキに微笑んでみせる。それもどちらかというと意地悪に感じる局面でばかり。
マサキがシュウと出会《でくわ》したのは、シャンパンを買い、ローストビーフを買い、ケーキを買おうかどうしようか悩んでいるところでだった。建ち並ぶ菓子店の店先でどこにしようか悩んでいたマサキが目に付いたのだろう。「偶にはきちんと欧風らしい菓子を用意してはいかがですか?」と、古書を漁りに来ていたらしいシュウは、菓子代を持つことを条件にサイバスターで自身を指定の場所まで送り届けることを要求してきたのだ。
ドーム型のバターケーキと三日月型のクッキー。ドライフルーツのたっぷり入ったクグロフに、バニラの香りも強いバニレキプルファンだ。どちらも見掛けることはあっても購入したことのない菓子。「本当にクリスマスの菓子なんだろうな」それぞれ店に並んでいる量を全て買い切って、「信用のない」シュウは念を押すマサキに微笑んでみせた。
「クグロフはフランスの伝統菓子、バニレキプルファンはドイツの伝統菓子ですよ。日本のようにホイップクリームを使わない菓子が欧米では一般的です。昔ながらの伝統行事ですからね。日持ちする菓子でないと、色々と準備や後始末が大変だったのでしょう」
自身の書物という荷物があるにも関わらず、マサキが山と買い込んだ荷物を半分手に持って街を出たシュウは、サイバスターの格納スペースにそれらを積み込む手伝いまでしたものだ。十六人の魔装機操者にリューネやウェンディ、セニアも加えてのクリスマスパーティ。荷物は相当の量に及ぶ。足代代わりのこととはいえ、マサキとしては借りを作ってしまったような感が拭えない。
「で、どこまで送ればいいって?」
「サイバスターでしたら二十分ほどでしょう。ここから南に下った街の近くで下ろしてくだされば」
マサキはサイバスターの操縦席に収まって起動準備《セットアップ》を始める。プロフラムを呼び出すと、計器類に火が灯った。全て|問題なし《オールグリーン》。留守を守っていた二匹の使い魔はきちんと仕事をこなしたようだ。
「料理とシャンパンだけどさ、少し持って帰ったらどうだ。こっちの世界には関係ないイベントだけどさ、あいつらと気分だけでも味わってみるのも悪くないんじゃないか」
キリスト教系のイベントでもあるクリスマス。信仰体系の違うラ・ギアスでは通用しないイベントだ。とはいえ、マサキの知らないクリスマス菓子を口にしてみせた地上人の血を引く男。少しは地上の文化に触れてみたくもあるのではないだろうか? シュウを送り届ける地点《ポイント》をナビゲーターに入力して、購入したらしい古書の一冊を早速とばかりに読み始めているシュウに、マサキはだからこそそう勧めてみるも、
「結構ですよ。シャンパンよりはスパークリングワインの方が好みですしね」と、にべもない。
それでも何か物思うところはあるようだ。操縦席に凭《もた》れていたシュウは古書を捲る手を止め、少し考え込むとマサキを振り返って、
「そうですね……もし、私のしたことを借りに感じてくれるというのなら、今から少しだけ、あなたの時間を私に分けてくれませんか」
「昼からのパーティに遅刻してるんだよ。今日は流石に」
「どうせ夜中近くまで騒ぐのでしょう? でしたら二時間ぐらいは誤差ですよ、マサキ」
云うなりマサキの口唇に指先を這わせてくる。「お前、操縦の邪魔になるだろ」突然の愛撫。操作を続ける手元が狂いそうになるのをどうにか堪えて、マサキはプログラムを走らせた。起動開始《スタートアップ》。地を滑るようにサイバスターが動き始める。だのにシュウはマサキを解放するつもりはないらしい。指先を離すと、今度は身を屈めてその耳元で低く声を吐く。
「ここで済む話ですよ。それでも嫌?」
「当たり前だろ。ここをどこだと思って……っ……」
耳を口唇で挟み込むように喰《は》まれて、マサキは身体をぴく、と震わせた。続けて耳の中に舌が入り込んでくる。「やめ……、シュウ。手元が狂う……」操縦させる気がまるでないシュウの愛撫に、それでも相手にしなければいずれは引くかも知れないと、マサキは暫く堪え続けながらサイバスターを疾《はし》らせるも、そんな抵抗など些細な障害《こと》とばかりにシュウはマサキの耳を舐《ねぶ》り続けるものだから堪ったものではない。
「ここだからいいのですけどね」嗤いながらしらと云ってのける。「クリスマスプレゼントですよ。ねえ、マサキ。私にあなたをくれる気はない?」
顔を仰がされたところで、流石にマサキはサイバスターの制御停止《システムブレーキ》を実行した。背後に流れて行った街の影が見えなくなったところでサイバスターが止まる。平原の只中。重ねられたシュウの口唇が思うがままにマサキを貪る。舌を絡め、口唇を喰み、口の端を吸い……長い口付け。それをひたすら受け入れ続けたマサキは云った。
「本当にてめえは自分の欲を果たすことには躊躇いがないな。事故ったらどうしてくれるんだよ」
「私はあなたの操縦能力を信用していますから。サイバスターの操縦能力でしたらあなたの右に出る人はいないでしょう。それい、いざとなればサイフィスも助けてくれるでしょうしね。万が一何かあったとしても、あなたとの情事の最中に死ねるのでしたら、それはそれで本望ですよ、マサキ」
「俺はそんな死に方は嫌だぞ。笑い話じゃ済まねえ」
肘当てを乗り越えて操縦席に身体を滑り込ませてくるシュウに、マサキは愚痴りながらも腰を浮かせて僅かに身体を除ける。「きっと闇に葬り去られる醜聞《スキャンダル》になるでしょうね」自分のことながら他人事なのはいつものこと。マサキの腰に腕を絡ませつつ操縦席に収まったシュウの足の間に導かれるがまま。腰を下ろしたマサキは、シュウの胸元に背中を預けた。
「とんだクリスマスだ。神様だかサンタだかは、よっぽど捻《ねじ》くれた根性をしていやがるに違いない。てめえと会ったのが運の尽き過ぎる」
「私にとってはこの上ない恵みあるクリスマスですよ。サンタクロースも粋な計らいをしてくれる。唯一神教も侮れないものです」
精霊信仰のラングラン。三柱神が実存するラ・ギアスで、運命を気紛れに操作してみせる超越的な神の存在に言及してみせても詮無いこととはわかっていても、マサキは云わずにいられない。そんなマサキの嫌味をさらっと言葉で捩じ伏せて、シュウはマサキの服に手を掛けた。
早速とばかりに外される上着《ジャケット》の留め具に、捲くり上げられるシャツ。その手がマサキの顎を掴んだと思うと、耳元を這い回る舌。馴染んだ快感に腰が二度、三度と跳ね、それでも収まりきらずに震えた。
「偶然に頼るくらいだったら、最初からの約束にしろよ……忙《せわ》しないのは嫌なんだよ……」
「彼らに口実を付けるのが大変でしょうに、よく云う」
腰を抱えていた手が肌を伝いながら上ってくる。脇腹から肋骨、そして胸。冷えた指先の柔らかい愛撫に乳首を捕らえられてマサキは小さく声を上げた。「そのぐらだったらどうとでも……っ……」言葉の端々に滲み出てくる甘ったるい響きが、自分の欲望を露わにしてゆく。もう腰周りがもどかしく感じられて仕方がない。マサキはそのまま、暫く、黙ってシュウの愛撫を受ける。
「それに、あなたの国では来年の事を言えば鬼が笑うと云うのでしょう?」
ほら、と膝を抱え込まれて、シュウの膝の上で身体を横にされたマサキは足を肘掛に引っ掛けて爪先を垂らした。「そうやって理屈ばかり捏《こ》ねくり回しやがって」そうして背中をシュウの腕に預ける。
子供のようにマサキを膝の上に抱えるこの体勢がシュウは好きらしかった。恐らくは、座ったままで割と自由にマサキの身体を弄《もてあそ》べるからなのだろう。そうした格好を躊躇いなく取れてしまうようになった自分が、マサキとしては少しばかり悔しくもある。
シュウにいいようにされるだけなのは、マサキとしては本意ではなかったけれども、それがどうしようもなく心地よく感じられてしまう自分もいる。二律背反だ。それでもマサキは覗いてみたいと思ってしまう。知ってしまった快楽の向こう側を。
「……来年の約束ぐらいどうってことないだろ」
マサキの口唇を、首筋を、鎖骨を、シュウの手が辿ってゆく。自らの欲望を隠しもしなければ引きもしないシュウに、こうしてマサキは何度折れてしまっただろう。与えられる快楽への期待を失えないマサキも悪いのだということを、マサキ自身もわかっている。だからと云って、顔を合わせる度に身体の関係を持つのが当然となりつつあるこの状況に物を思わない筈がない。
緩やかな愛撫に身を委ねながら考える。
どうせ魔装機操者の飲兵衛の一団は、飲めれば何でもいのだ。花見だの海水浴だの月見だのクリスマスだのとイベントにかこつけているのは、そうやって理由を付けて飲ませないと、集まっては直ぐ酒盛りにしてしまいかねないぐらいに、彼らが三度の飯より酒を選ぶ人種だからだ。
鉄の肝臓を持つ彼らとマサキは違う。酔っては乱痴気騒ぎにしてしまう彼らに、適量で程々に酔うのが好きなマサキが付き合うのは気が入る。だったらイベントはイベントで、シュウとふたりで過ごす日にしてしまった方がいい。むしろその方が気が楽だ。
「鬼が出るだけならいいのですが、余計なものまで引っ張り出してしまってはね。百鬼夜行とも云うでしょう。有象無象の中に何が潜んでいるとも限らない」
誰よりも自由を愛し、求める男は、ひとりで過ごす時間を誰かに邪魔されるのを極端に厭う。それはふたりでいるときに自由に振舞うことを許しているマサキが相手であっても変わらないのやも知れない。
「何で来年のクリスマスの話が百鬼夜行なんて話になるんだよ。怖い鬼でも来年の話を今からしているのを聞いたら笑っちまうって話だろ。その教訓は襲ったり襲われたりって話じゃない」
「鬼が笑うほどに愚かなことなのでしょう? わかっていますよ、マサキ。だから、ですよ。先ずは今年のクリスマスを楽しむべきでしょう。来年の話は来年になってからにしませんか」
「あのな、お前、そんなに俺とふたりで過ごすクリスマスが嫌なのかよ。やることだけやれればいいって? それもどうなんだ。普通にふたりでチキンやケーキを食いながら過ごすクリスマスがあってもいいだろ」
なんやかやと理屈を捏ね回して、ふたりで過ごすクリスマスの約束をするだけの簡単なことから逃げ回ろうとするシュウに、マサキはストレートに切り込んだ。その言葉を聞いたシュウの眉根が少しだけ歪む。
「あなたが仲間と過ごす平和な一日を私が奪ってしまうのはどうかという話ですよ、マサキ。それともあなたはそれでもいいと云うの? それでしたら、この程度では済ませませんけれども」
「良くなきゃ云わないだろ。ただ、普通に過ごす時間は寄越せよ。一日中、てめえの欲望に付き合わされるだけのクリスマスなんて御免だからな、俺。ちゃんとクリスマスならクリスマスらしくしたいじゃないか」
「勿論ですよ、マサキ。楽しみは後に取っておくものですしね。それに、一日あればやりたいことの大半は出来る。あなたの要望を聞き入れるのは容易いことです」
口付けをひとつ。触れるだけで離れた口付けのあとで、シュウはマサキの背中を引き上げると、その身体に覆い被さるようにして胸元を啄《ついばみ》み始めた。マサキの腰が仰け反る。穏やかに睦み合う時間が過ぎ去ろうとしている……マサキはシュウの愛撫に全身で応えた。啄まれては仰け反り、つつかれては声を上げ、舐られては震える。
「あ、ああ……シュウ……」
シュウの手がマサキのジーンズにかかる。脱がす手の動きに合わせながら、マサキは自らもまたジーンズから足を抜いた。きつくて堪らなかった腰周りがようやく楽になる。ふう、と息を吐いたのも束の間。マサキの股間に絡み付くシュウの手が、マサキの吐息を忙しないものへと変えさせていった。
「シュウ、やめ……いく……」
シュウの服を掴んで、胸に頭を擦りつけながらマサキは喘ぐ。
好きと嫌いで云えば、こうして喘がされるのは好きだ。全身を甘ったるい快感が駆け巡る。身も心もとろけそうな愛撫というのはこういったものであるに違いない。けれども――……マサキは知ってしまっているのだ。もっと強烈な快楽がその果てにあることを。それをマサキの中から呼び覚ますことができるのは、この男しかいないということも。
「どうして欲しいの、マサキ?」
「挿れて……俺の中に、挿れて……」
それを求める言葉を吐かされる。それだって快感だ。
昔は気恥ずかしさばかりが勝って云えなかったその手の台詞も、欲望を果たすことに慣れるに従って躊躇わずに口にできるようになった。求めれば与えられる。焦らされることも多かったけれども、そうしたマサキの態度の変化をシュウは快く感じているのだ。
「こっちを向いて、マサキ。自分で挿れる?」
「うん……」
操縦席の隙間に爪先を押し込んで、シュウと向かい合わせに座ったマサキは腰を浮かせた。「そう、そのままゆっくり……」押し当てられたシュウの男性自身を、飲み込むように腰を落としてゆく。待ち望んだモノ。ああ……と、その全てを自身の身体の中に受け入れたマサキは、溜息にも似た喘ぎ声を洩らした。
緩やかに下から突き上げられては、身を捩ってマサキは鳴く。逃げ出してしまいたくなるほどの快楽がマサキの意識と身体を攫う。より深い快楽に溺れていけとばかりに。それが時々、マサキは怖くなる。どこまで自分は快楽を求めてゆくようになるのだろうと。
上り詰めかけては本能的に腰を引く。
だのにシュウの手は、しっかとマサキを掴んで離さないのだ。
やがて快楽に馴染んだマサキの身体が、それ以上を求め始める。達《い》きたい。深い快楽に貫かれて、身体の奥底に溜まった己の精を放ちたい。それ以外の欲望など思いつきもしなくなる。だらしなく口を開いて喘ぎながら、マサキはシュウにしがみついた。それをうっすらと笑みを浮かべた愉悦の表情で、きっとシュウは眺めているに違いない。自分しか知らない、自分に従順なマサキの姿を、そうしてシュウは愉しんでいるのだ。
「ほら、マサキ。動いて。もっと好《よ》くなりたいのでしょう」
肩に伏せた顔を揺らしながら、マサキはシュウの腰の動きに合わせて自らもまた腰を振った。
シュウ以外の他人を知らないマサキにとって、シュウとの性行為はその全てだ。それまでに他人との間に望んだことがなければ、これからも他人との間に望むことはないだろう。そのぐらいにシュウとの行為はマサキを満たして止まない。
けれども拭えない背徳感。特に今日は場所が場所だ。
サイバスターの操縦席で痴態を晒すマサキを、風の精霊サイフィスはどう感じているのだろう? 見捨てられていないということは、戦闘意欲以外の資質に対しては我関せずといったところであるのだろうか? だとしたら、精霊という存在は残酷なまでに鷹揚だ。そんな考えがマサキの脳裏を過ぎった。
――戦う意思を失わない限りは、その御心のままに……。
誰かの声を聞いた気がした。優しくも気高い声を。
その直後、どうにもならないほどの快感がマサキの身体を駆け巡った。しがみつく手に力を込めて、何度か腰を揺らす。「ああっ……、あっ……」声を上げながら、腰に蟠っていた欲望をひと思いに吐き出して、マサキはぐったりとシュウに凭《もた》れ込んだ。
暫くの間、そうして肩で息を吐くマサキの髪を梳《す》くように撫でていたシュウが、その呼吸が整うのを待ってからおもむろに言葉を吐く。
「ねえ、マサキ。そろそろ私の好きにしてもいいですか」
未だ、マサキの身体の中に収まっているシュウの昂ぶり。抜くに抜けないほどに膨らんだ欲望が、確かな形となってそこに在る。シュウの言葉を耳にして、達したばかりの虚脱感に身を任せていたマサキの背筋にぞくり、と痺れが走る。快感を求める気持ちに火が点くのは一瞬だ。マサキは深く頷いた。
そこからは息を吐く間もないほどに。
操縦席に埋められた身体。力の抜け切ったその足を高く掲げられて、何度も、何度も。足を開かせて、或いは折り畳んで、形を変えては、何度も。自らの存在を叩き込むようにシュウはマサキを貫いて、気の赴くままにその欲望を吐き出し続けた。
「やめ……もう、無理……本当に、無理……」
二時間とは軽々しくも良く云ったもの。その時間の長さを思い至れないマサキではなかったけれども、その大半をいいように扱われ続ければ疲労も溜まる。何度もシュウの欲望を受け止め続けた腰は痛んで悲鳴を上げ、マサキに動くことすら億劫に感じさせていた。ましてや振動のある魔装機神の操縦など。
服を着せられて、シュウの膝の上。ようやくの休息を得たマサキは、深くその身体に背中を埋めて、やけに涼しげな表情でマサキを見下ろしているシュウの顔を仰いだ。
「この程度でこれって、お前、来年は何をするつもりなんだよ」
「さあ、何にしましょうか。あなたにしたいことはまだ山ほどありますしね。それはその時に考えますよ。その前に叶えられることもあるでしょうし」
そこで何を想像したものか、ふふふ……と、シュウは愉しげに声を上げて笑った。「後のことを考えろよ、後のことを」マサキは盛大に溜息を洩らしながら愚痴る。きっと碌でもない想像に違いない。
「もうパーティどころじゃねえ。少しでもいいから寝たい。これじゃ酒なんか入ったら一発だろうな。本当に疲れた。南の街まではお前が操縦しろよな。休める時に休んでおかないと、操縦しながら寝ちまいそうだ」
「私にサイバスターの操縦が出来るとでも?」
「出来るだろ。これだけ好き放題しておいて、サイバスターに弾かれずにいられるってことは、お前でも動かせることは動かせるってことだ。元々、出来ない能力じゃないんだし……」
そろそろと身体を支配する眠気に欠伸を噛み殺しながら、マサキは手馴れた様子でサイバスターの操作を始めたシュウに、ほらな、と云った。サイバスターの意思がその操作を容易にさせることを、その操者に選ばれたマサキは誰よりも良く知っているのだ。
起動したサイバスターが、平原を疾《はし》り、南へ向かい始める。モニターに流れてゆく景色を眺めながら、これなら問題はなさそうだと目を閉じかけて、「そうだ。肝心なことをすっかり忘れていた」と、マサキは再びシュウを仰いだ。
「メリー・クリスマス、シュウ」
「メリー・クリスマス、マサキ」
イベントの日に顔を合わせただけで気忙しくことに及ぶのは、今年で終わりにするのだ。マサキは今度こそ目を閉じる。ケーキとチキンとアラカルト。料理の並んだテーブルを想像する。来年のクリスマスはそんなテーブルを挟んで、ふたりでゆっくり時間を使って過ごせる。考えただけでマサキの胸は弾む。
そう、来年からはずっと。
他の操者たちからは色々と云われるに違いなかったけれども、そんなことは些細なこと。何だかんだ云っても、マサキはそういった特別な日をシュウと一緒に過ごしたくて仕方がなかったのだ。まだまだ先のこととはいえ、それがついに叶う。これで胸が弾まない筈がない。
「後は任せたからな。着いたら起こせよ」
シュウの膝の上。その温もりを感じながら自らの愛機の操縦をシュウに任せたマサキは、そうして、これ以上となく幸福な気持ちで暫しの眠りに就いた。
.
.
PR
コメント